ニュースレター

武蔵野文化協会ニュースレター第2号(2021.8.1)

近世古文書部会代表 根岸 茂夫

古文書部会は1976年に設立され、一時休会ののち1989年に再開され、月1回の講座を続けてきました。現在コロナ感染で中断を余儀なくされ、再開を待ち望んでいます。
十数名から数名という参加者ですが、時には脱線し、時には原文書や関係の絵図・瓦版などを手に取って熟覧し、楽しい時を過ごしています。これまで活字化されていない江戸時代のくずし字の史料を読んできました。今までに『武蔵野』誌上で一部を紹介したこともあり、たとえば関東取締出役河野啓助が文政9年(1826)に記した関東農村の見聞報告書(63巻1号・1985年)はしばしば研究でも引用されています。また数年読み続けた『生涯夢の旅日記』は、近世後期に代官所の役人を歴任した鷹野領助という人物の自伝ですが、彼は鷹羽風と名乗った狂歌師でもあり、彼の波乱に満ちた人生には参加者も興味をそそられました。その一節の富士山登拝の紀行文(89巻1号・2014年)も紹介しました。
現在では、寺子屋の教科書『往来物』のうち、歴史系の木版本などを読んでいます。往来物は江戸時代に約6000種類作成され、特に歴史系往来物は、歴史上の人物の書状(創作)を集めた『古状揃』を始め、南北朝を題材に『南朝忠臣往来』、戦国の武田・上杉の争いを描く『甲越古状揃大全』などが作られ、子供たちの歴史知識や歴史観の基礎となりました。
江戸時代の人々の歴史意識を読み解ければと考え、参加の方々と楽しく読んでいます。


武蔵野文化協会ニュースレター第2号(2021.8.1)